入水鍾乳洞2003年9月


昼食後、ゴルゴ・カーナビと交渉
ピッキー:次のターゲットは入水鍾乳洞だ 報酬はUS$100,000。指定のスイス銀行の口座に振り込んでおく。頼む、引き受けてくれ。
ゴルゴ・カーナビ:…いいだろう やってみよう
ピッキー:おお ありがとう

二時間に及ぶ(?)交渉の結果、我々は無事に無言の案内に導かれ、入水鍾乳洞に到着した。
仕事はきちっと完遂。さすがプロ中のプロ、ゴルゴ・カーナビ。

Pi-子:あぶくま洞へ行く時はすごい山道だったのに、あぶくま洞から入水鍾乳洞へ来る時は車幅の広い道しか通らなかったね。
確かに、遠回りをしたとしか思えない。
しかしそれはゴルゴ・カーナビのせいではなく・・・また機嫌が悪くなるのでこれ以上言うのはやめよう。(ちゃんと入力しました! by Pi-子)

9月の半ばだというのに、駐車場は満車に近かった。
もっとも駐車場そのものが狭く、10台とまれるかどうかというところだったが。
その中で1台分、なんとか空きを見つけ車を止める。

駐車場の先の階段を上ると30年前から時の歩みをやめたような売店と食事処が1件ずつあるぐらいで、あぶくま洞とは対照的だ。

さらにその先に受付がある。そこでチケットを購入し、ひととおり説明を受ける。
これから我々が探検する入水鍾乳洞、全長900メートルであるが、3つのコースに分かれているのだ。
といっても3つの鍾乳洞があるわけではない。


上の図を見てもらいたい(実は入場券の裏)
コースがA、B、Cになっているが、正確にはAコース、A+Bコース、A+B+Cコースとどんどん奥へ行けるのである。

Aコースは言わば初級。普通の鍾乳洞観光といった趣で特別な装備はいらない。
照明と滑らない靴があればより安全というレベルのものだ。

Bコース(中級)となると基本的には水に濡れてもいい服装、照明類は必須である。
さらに匍匐前進 ヘッドスライディング 回転レシーブ 一人時間差などもの高等技術が要求されるのだ。

Cコース(上級)は全く灯りがない未整備なので、道先案内人がつき、案内人の指示の元、進むことになる。
今回我々が選択したのはBコースなので、Cコースともなるとどのようなアクロバティックな体位が要求されるのか、次の機会に試してみたいと思う。

我々の名誉の為に言っておくと、Bコースを選択したのは臆したわけではなく・・・お金がなかったのだ。(ぼそぼそ)
Aコースの入場料は550円(大人1人)、Bコースの入場料は700円(大人1人)と料金定額制。
あぶくま洞の入場料は1,200円(大人1人)だったからかなりリーズナブルな価格といえるが、Cコースとなるとは小学生以上5人まで4,600円という料金に跳ね上がる。

つまりはガイド料であろう。
5人集まれば1人あたり920円になるが、今回、我々は2人。
ならば1人あたり2,300円というあまり喜ばしくはない値段になってしまうのだ。


川口浩を装着した俺。(頭からビームが出ているみたいだ)
さて、洞窟のコース説明と料金説明は分かってもらえただろうか?
次は肝心な装備についてだ。

洞窟慣れしていないが、HPなどで事前情報を仕入れておいた我々は、とりあえず、下は水着、その上に普通の服(Tシャツ+ジーンズ)を着ていた。
さらに、水に濡れる&防寒という意味でレインコートを用意。
それからこの日の為に用意したヘッドライト通称「川口 浩」

「川口 浩」は近所のモンベルでそれなりの高級品を購入。
普段使うものではないので使い捨て感覚の安物でもよかったが防滴機能も要求されるので、安物ではかなり不安もあったし、いざとなれば 災害時に役に立つであろう。

以上、これで完璧!と思ったのだが・・・
Pi-子:ピッキー、ビーサン(ビーチ・サンダル)持ってきた?
ピッキー:いや・・・
Pi-子:じゃあ、借りておいでよ。真っ暗な鍾乳洞の中を歩くんだから、ないと足を切る可能性があるよ。


合羽、コムぞうりなどは途中通った30年前から時の歩みをやめたような売店でレンタル可能だった。
照明の類(懐中電灯とか)のレンタルは?と思ったが、灯りはレンタルではなく、ここでローソク購入可能とのこと。
店の中はお約束で、50年前のお嬢さんが店番をしていた。

先客で現在のお嬢さん二人組みがおり、店番の50年前のお嬢さんにいろいろ質問をしていた。
私がその質問に答えれば株が上がるというもの。ついでに手取り足取り先導してあげようかと思ったほどだが・・・探検前だったのでそれは不可能だった(残念)。

先ほどチケットを購入した受付のとなりに更衣室があり、そこで戦闘服に着替える。
と言っても、下に水着を着ていたのでただ単にジーンズを脱いだだけなのだが。

水着の上に雨具を羽織り(上半身はTシャツ着てます)、頭に川口浩を装着し、いざ突入!


分かりにくいが滝
一歩、足を踏み入れると鍾乳洞独特のひんやりした空気が身を包む。
ここにいれば夏の暑さも忘れることができる。

ちなみに洞窟内の気温、水温は一年中ほぼ一定なので、冬にくれば寒さを忘れることができるようである。
・・・とはいっても冬に来るのはちょっと勇気がいる行為だが(^_^;
中には冬に楽しむ常連さんなんかもいるようだ。

ドドドドド……すざまじい水の音が聞こえてくる。
それもそのはず、入り口付近は「見下の滝」「不動滝(高さ6m)」「中滝」「脚下の滝」「行者の滝」と滝が集中している。
あぶくま洞のようなライトアップは全くないので(蛍光灯があるのみ)どれが何の滝なのか全く分からない。
普通に地上にいれば大した音ではないのかもしれないが、洞内を反響しているので「工事中ですか?」と思うぐらいの音量だ。

初級エリア(Aコース)は通路も作られて照明も明るい。
あぶくま洞の探検コースと同じ・・・いや、探検コースの方がややたいへんかな?というぐらいだったが、Bコースに入ると自然の牙は容赦なく我々を襲う。
まずは整備された道がなくなり、地下水に足をつけながらの移動。
照明は道順を示す為か、ところどころ豆電球がついている程度。

ごくっ・・・恐る恐る足を踏み出す。
暗くて深さがよく分からないので「くるぶしがつかる程度かな?」と思っていると、足は一気に脛くらいまで水につかる。
おまけに冷たいっ!ちぎれそうになるという表現は決してオーバーではない。

が、前を見ると・・・ざぶ、ざぶっ、ざぶっ!・・・Pi-子が水の中をモーレツに前進しているではないか!

ピッキー:よくこの水に足をつけらえるな。
Pi-子:足が冷たさでマヒしないと、先に進めないって受付のおじさんが言ってたでしょ。早く慣れさせようと思ってんのよ。

そういえば、そんなこと言っていたような・・・。
しかしこの水は冷たい。

先に進むと、道は狭く、暗くなっていく。
豆電球を中に仕込んだロープのようなものが頼りで、大人ひとりがやっと通れるくらいの通路を歩いていく。
一方通行ではないので奥まで行った人が帰ってきたらどうやってすれ違うというのだ。

どんっ!前を歩いていたPi-子が突然立ち止まったのでぶつかってしまった。
ピッキー:何だよ、急に!
Pi-子:前から人が来るんだよ。ほら、灯りが見えるでしょう?


見ると、暗闇の奥からぼんやりと光が近づいて来ているのが見える。
Pi-子:ここから先へはかがまないと行けないから、ここで通り過ぎるのを待っていよう。

最近、都会では忘れられたゆずりあいの精神が気持ちいい。
し〜かし、だんだん足が冷たさで痛くなってくる。 こうしている間だけでも、足を水からだしていたいのだが、そんなスペースはない。

やけにスローペースだ・・・と思ったら、ご年配の団体さんだったようだ。
先頭のおじいさん:ああ、どうもすみません。
ピッキー:いいえ・・・

足の痛さに歯を食いしばりながら笑顔で答えたつもりだったが、暗くて表情をよく見られなかったことは幸いに違いない。
満面の笑みをうかべるには役者の資質も必要なのだ。これができれば劇団四季への道も近くなろうというものだ。

Pi-子:この先はどうでしたか?
おじいさん:いやぁ・・・すごかったですよ〜。あなたたちはどのコースですか?
Pi-子:Bコースです。
おじいさん:我々はCコースだったんだけどね、数人がはぐれちゃって、最後まで行ったのは・・・半分ぐらいかな?
おばさん:あのガイドひどいわ〜、どんどん先へ行っちゃうんだもの。Bコースはわずかながら灯りがあるから行けるけど、 Cコースに入る所から本当に真っ暗闇になるから怖くて、私たちはぐれ組はBコースの終点で待っていたのよ。
Pi-子:そ・・・それはたいへんでしたね。
(^o^;

ご年配グループ(8人ぐらいだったかな?)が通り過ぎるのを待ってから出発。
先ほどのおじいさんの「いやぁ・・・すごかったですよ〜」という言葉の通り、通路はさらにせまくなり立って歩けなくなってきた。
しかし早く行こうと思って、頭上の注意をおろそかすると・・・

がつんっ!
Pi-子:いっ・・・痛〜〜い!

Pi-子のようにつらら状の鍾乳管に頭を打ってしまうのだ。

そうゆう私も数回頭を打ってしまい、痛む頭をさすりながら、めげずに前進する。
すると「胎内くぐり」と名づけられた場所に出た。

名前の通り「ここ通れるんですか?」というぐらい狭い岩の間を通っていくのだ。
這いつくばって人ひとりがやっと抜けられるぐらいである。

Pi-子:あらよっ、どっこいしょっと
まずはPi-子がチャレンジ。苦戦しながらも何とかクリア。

Pi-子が通れたのだから問題はないだろうとたかをくくり、チャレンジ!
しかし、心の隙があったのだろう、ここでアクシデントが発生。(自業自得 by Pi-子)

がっつん!・・・カラン、カラ、カラ、カラ、カラ・・・

軽く何かが転げ落ちる音がし、突然、暗闇が私を襲う!

うお!?こ、これはいったいどうしたことだ

ここまで来ると足がマヒして痛みは感じなくなっていたのだが、違う問題が発生した。
なんと胎内くぐりを通った時、岩に川口浩の一部がひっかかり電池がばらけてしまったのだ。

あわてて回収するがかなり場所はせまく、水流もそれなりにある所なので全部は見つからず、そのあとはPi-子の川口浩を頼りに進むことになった。

それからも、低く狭い変化に富んだ洞内をどんどんと進んでいくと、どうにかこうにか中級コース終着のかぼちゃ岩まで到着した。

じつに長い道のりだった!!

かぼちゃ岩によりかかり、目をつぶると今日という日に起こったことが次々と走馬灯のように思い浮かぶ。
我々はとうとうここまで来たのだ!
前人未到でも幻の地底人の発見もできなかったが、なかなかの達成感である。

かぼちゃ岩から先をふと見るとその奥にせまく口をあけるCコースのルートがあった。
監視がいるわけではない。行こうと思えば行けないことはない・・・が、一寸先が見えない暗闇とはこのこと。

先ほどのおばさんがはぐれてからガイドなしでは先へ進めなかった、というのがよく分かる。人は本能的に闇を恐れるのだ。

しかし、待ってろよ 次こそは…
達成感とともにわいてくる闘志と勇気。

宝くじに当たるか、有志を5人以上集めて、Cコースに挑んでみたいと思う。(確率からいくと後者だろう)
川口浩の意思を継いで結成された藤岡弘探検隊のように・・・。(変身してくれ by Pi-子)


この日の夜は温泉宿に宿泊。
つかの間の休息をとった翌日、出発地点でもあった郡山駅へレンタカーを返しに行く。

レンタカーの店員:おかえりなさい。ドライブは楽しめましたか?
Pi-子:いやぁ〜・・・あの、カーナビなんですけど、音声が出ませんでしたよ。
レンタカーの店員:えっ、そんな。それは失礼しました。

と言いながら、店員さん、業務用のマニュアルを開きながらあれこれ試してみる。

Pi-子:うちらもマニュアル見て、いろいろ設定してみたんですけど、ダメだったんですよ。
そう、ゴルゴはむやみにおしゃべりなどしないのだ。

ゴルゴ・カーナビ:ポン。音声案内を開始します。
おおっ、ゴルゴがしゃべった!!・・・しかも女性の声で・・・

レンタカーの店員:あ〜、前の人が変な所いじちゃったんだな〜。この設定は普通では直せませんよ。本当に申し訳ありませんでした。
ピッキー:あ・・・い、いいえ・・・ルート探索はできたから、よかったんですけどね・・・


それから、俺は何か裏切られたような気持ちで東京行きの新幹線に乗った。

(ピッキー)


セカンド・インパクトへ